ソポクレス、高津春繁訳『コロノスのオイディプス』(岩波文庫、1973年)



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『オイディプス王』で、自分がテバイの先王であるライオス殺しの張本人であると知り、両目を潰したオイディプス。その後オイディプスはテバイを追われ、娘のアンティゴネと供に放浪の旅を続ける。そんな彼に対し、以前は彼に悲劇をもたらした神から和解の手が差し伸べられる。そのときオイディプス家に起こる運命とは...。ソポクレスのオイディプス家の悲劇を扱った3作品の中の、年代順でいえば最後の作品であり、内容的には2番目の話である。

「……火を手にしたもう神、ティタンなるプロメテウス……」
p.11-12


オイディプス「おれの所業は、おれがやったと言うよりは、おれのほうが被害者なのだ。」
p.23


オイディプス「なに、そなたは神々がおれを憐れんで、いつかは救いたもうという望みをもつにいたったのか。」

イスメネ「そのとおりでございます、お父さま、このご神託によりまして。」

オイディプス「それはどういうのだ。神の言葉とはなんだ、わが子よ。」

イスメネ「「死んでも、生きていても、かの地の住民たちは、幸のために、汝を求めるであろう」というのでございます。 」

オイディプス「だがおれのような人間が誰の役に立つというのだ。」

イスメネ「お父さまには、彼らの力を左右なさることが、おできになるとのことでございます。」

オイディプス「おれがもう役に立たぬ者となった時に、おれは男となったのか。」

イスメネ「今こそ神々はお父さまを立たせようとなさっていらっしゃる、以前は滅ぼそうとしておいででしたが。」
p.28-29


オイディプス「……ここにいるこの二人のおかげだ、おれが日々の糧を、行く地での宿りを、血縁の世話をうけ得たのは。 二人は、乙女でありながら、力の及ぶ限りつくしてくれた。ところが二人の息子どもは、父の代わりに王座を、王笏で土地を支配し 治めるほうを選んだのだ。」
p.31


オイディプス「その昔、おれが、われとわが手でもたらした禍いに苦しんでいて、国から追われることを望んだ時には、そ れをかなえてくれようとはしなかった。ところが、もう怒りが峠を越し、家にいるのが楽しかった、その時に、お前はおれを追い出 し、追い払い、お前の言う血のつながりには、その折には、なんの愛情ももたなかった。」
p.48


コロス「ほどよい年では飽き足らず、
もっと長い命を望む人は、
私の目には、
明らかに愚かものだ。
長い日は多くのことを喜びよりも苦しみに近づけ、
長生きをしすぎた者には、
楽しみはどこにも見当たらない。
救いの主はすべての者に最後には等しく現れる、
ハデスの運命が、結婚のことほぎの歌もなく、
堅琴の樂も、踊りも伴わずに、現れる時、
そうだ、最後には死だ。」
p.71-72


オイディプス「……悪人中の悪人め、いまはお前の兄弟がテーバイでもっている王笏と王座とをお前がもっていた時、自分 の父親を追い出だし、国なき者とし、自分がおれと同じ禍いに落ちた時に、いまはそれを見て落した、この着物をおれが着るように したのは、お前自身なのだ。」
p.77


ポリュネイケス「おれは凶報は知らせはしないつもりだ。よいことのみを告げ、悪いことは言わぬのが、立派な大将の務め なのだ。」
p.81




SEIICHI MORIMOTO <森本誠一>
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