従軍慰安婦

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はじめにの前に

 何をどこから伝えたらよいのだろう。これはこのあとにある「何をどこから学んだらよいのか?」の裏返しでもある。これから従軍慰安婦の問題について知ろう、学ぼうとする者にとって何をどこから学んだらよいのかわからないように、私もあなたに何をどこから伝えたらよいのかわからないでいる。何年ものあいだ、授業でこの問題がコメントとして寄せられるたびに、正面からまじめに誠実に応答してきた。それでも最初からこの問題に対して偏見を持っている学生にはまったく伝わらないもどかしさがあった。伝わらないどころかますます偏見を強めていくようにすら感じられた。これはどこから来ているのだろうか、伝え方が悪いのだろうか、などとずいぶん悩んだ。いまでも悩んでいる。おそらくこういう文章を書いても読んでいないし、読めないのだろうと思う。つまり、こういう文章を書くこともまたよい伝え方ではないのだろうと思う。

 ただ、毎年毎年同じような質問やコメントが寄せられて、そのたびごとにアドリブで返すのにも限界があるので、ある程度、私自身も事実関係や伝える順番などを整理しておきたいと思うようになってきた。そこでこのような記事をかくことにした。

 この記事の使い方だけど、基本的には順番に読み進めてもらいたいと思う。

はじめに

 あなたは「従軍慰安婦」について、どう思っているだろうか。

  • 「従軍慰安婦」などと言われるものは、存在しなかった
  • いわゆる「従軍慰安婦」という名称は、正しくない
  • いわゆる「従軍慰安婦」と呼ばれている者の強制連行は、存在しなかった
  • いわゆる「従軍慰安婦」と呼ばれている者は、ただの売春婦である

以上のうち、いずれかでもあなたが信じていることがあるとすれば、それはどうしてなのだろうか。あなたがそれを正しいと信じる根拠はどこにあるのだろうか。また、あなたがそれを正しいと信じるに至った経緯はどのようなものだろうか。


正常な判断能力を失っていることに気づくことから

何をどこから学んだらよいのか?

 中学や高校の社会科、歴史(日本史、世界史)で習ったことはきちんと頭に入っていますか?まずは教科書を読んでしっかり学びましょう。そもそも教科書もまともに理解でき(てい)ないのに、ほかのことが理解できるはずもありません。

 こういう話をしたあとに、寄せられてくるコメントによくあるのが「それでも」「やっぱり...」というものだけど、もう1回確認しますが、教科書読みましたか?読んでないですよね。読んでもいなければ、理解もしていないし、基本的な事実関係も抑えられていないですよね。それにもかかわらず「それでも」とか「やっぱり」とかいうのは話になりません。少なくともあなたが最低限の最初の1歩、スタートラインにさえつけないのならば、どこまでいっても無駄です。一生そのままでしょう。まあご自分の妄想の中で生き続けるのならそれでもいいのでしょうが、哀れです。そうなりたくなければ、しっかり勉強しましょう。

 高校「日本史」の教科書を参照してみましょう。

 太平洋戦争の開戦後、政府は、民需生産の工場を軍需工場へ転用するなど軍需生産最優先政策をとる一方、国民に対しては生活を極度に切り詰めさせて兵力・労働力として根こそぎ動員した。1943年(昭和18)年には、大学・高等学校および専門学校に在学中の徴兵適齢文科系学生を軍に徴集(学徒出陣)する一方、学校に残る学生・生徒や女子挺身隊に編成した女性を軍需工場などで働かせた(勤労動員)。また、数十万人の朝鮮人や占領地域の中国人を日本本土などに強制連行し、鉱山や土木工事現場などで働かせた(注:朝鮮では1943年、台湾では1944年に徴兵制が施行された。しかし、すでに1938年に志願兵制度が導入され、植民地からも兵士を募集していた。また、戦地に設置された「慰安施設」には、朝鮮・中国・フィリピンなどから女性が集められた(いわゆる従軍慰安婦)。)。
『詳説日本史 改訂版』2016年、365頁(山川出版社の高校日本史Bの教科書)

 従軍慰安婦についての直接の記述はないが、同じく山川出版社の高校世界史Bの教科書から太平洋戦争に関する記述を引用します。

 〔太平洋戦争〕開戦後半年間で、日本は、マレー半島・香港・シンガポール・インドネシア・フィリピン・ソロモン諸島を占領し、ビルマを征服した。日本は「大東亜共栄圏」をとなえ、占領下のフィリピン・ビルマでは親日政権を設立させ、インドネシアでは親日組織をつくらせた。またインドシナ・タイには、日本との協力を声明させた。日本国内では開戦後、軍部の権力が強大になり、言論や報道がきびしく統制された。一方、すでに1930年代末から「創氏改名」などの同化政策が強められた朝鮮では、開戦後日本の支配が過酷さを増し、労働力不足をおぎなうために、労働者が日本本土へ強制的に連行され、戦争末期には徴兵制も適用された。

 東南アジアの占領地では、当初、日本を欧米諸国の植民地支配からの解放者として迎えたところもあった。しかし、日本の占領目的は資源収奪とそれに必要な治安確保であり、軍政のもとで、日本語教育や神社参拝の強制など、現地の歴史や文化を無視した政策がおこなわれた。さらに、シンガポールやマレー半島、フィリピンでは住民への残虐行為や捕虜を含む強制労働が多発したため、住民の激しい反感を呼び、日本軍は各地で抵抗運動に直面した。工業基盤の弱い日本は長期戦遂行能力に欠け、1942(昭和17)年6月、ミッドウェー海戦で大敗すると、戦争の主導権を失った。
『詳説世界史』2012年、367-8頁(山川出版社の高校世界史Bの教科書)

事実関係について

  • 日本国政府は正式に従軍慰安婦のこと、強制連行のことを認めている。
  • さまざまな資料や証言に基づき、事実関係は確かめられている。

政府の公式見解について

いつまで謝罪しつづけなければならないのか?/いつになったら形だけでない謝罪をしてくれるのか?

 まず前半の問いから考えていこう。たとえば次のような場面を考えてほしい。殺人事件を起こし、無期懲役の有罪判決を受けて服役している受刑者がいる。事件から10年以上たったいまも被害者の命日には謝罪の手紙を欠かさず遺族のもとに送り続けている。遺族はその手紙を一度も開封したことはないし読むつもりもなければ許すつもりもないという。謝罪の手紙を送り続けても一向に許しを得られないことにしびれを切らした受刑者は「いつになったら許してもらえるのか。いつまで謝罪しつづけなければならないのか。もう十分だ、十分償ったし謝罪もした」といって手紙を送るのをやめてしまった。面会に来たマスコミ関係者に対しては「10年以上も誠意をもって手紙を書き続けたのに、開封もしてもらえなければ、読んでももらえない。遺族には許す気なんてさらさらないのだから、手紙を送っても謝罪をしても意味がない。こっちはできることをぜんぶやったのだから、もう謝罪するのも手紙を送るのもやめた。悪いのはぜんぶ遺族だ」と答えた。

 さて、この受刑者に対してあなたが遺族ならばどのように思うだろうか。あるいは、あなたがまったく関係のない第三者として、この事件と裁判とその後の経緯について知ったとき、どのように思うだろうか。

政治家による従軍慰安婦を否定する発言


 これは永遠に。ただし、それは国としてであり、個人として日本人である私たちひとりひとりが謝罪をしなければならないわけではないし、それに対して個人として罪悪感を感じる必要もないということ。もし、私たちが個人として非難されるに値したり罪悪感を感じるべきことがあるとするならば、それは過去の歴史を個人として否定したり、個人として国家として誠実に過去の歴史の問題に向き合わないことを積極的に求めるようなときである。

 少し経緯を整理してみましょう。

 たとえば、池袋の暴走事故が起こり、加害者となった飯塚幸三受刑者(2021年11月3日時点)は、2019年4月19日の事故発生から2021年9月2日に東京地裁で有罪判決が下るまで自身の過失についていっさい認めてきませんでした。その後、控訴を断念して9月17日に有罪判決が確定するまでのあいだに、消極的ではありますが自身の過失と責任について認めるような発言をしているとの報道がありました。

以下、学生のコメント。

 先生が言っていたように日本は慰安婦の問題についてもちゃんと日本は謝罪していない。自分はしたと思っていたがなぜずっと謝罪を求められてるか今回の授業ですこしわかったかもしれない。自分はそのことを目で見ていないから本当のことは分からないけど情報だけで決めつけるのは違うと思う。

 確かに賠償金という言葉を使わず協力金と言っていたのは日本にも原因があると思いますが、新たに徴用工の問題を出してきたりと韓国の取れるだけ取ろうとする態度にも原因があると思います。

 「韓国の取れるだけ取ろうとする態度」って何?「新たに」というのはどういうこと?「徴用工の問題」はいつ明らかになり、被害にあわれた方たちはどのように過ごしてきていたの?

 授業で印象に残ったのは、日本が謝罪しなければならない問題がたくさんあると言うところに目が行きました。慰安婦問題についての謝罪する姿勢が大事だとは思いますが幾度と賠償金の請求をするのは流石におかしいと思いますと書いてあるところを見て自分も納得する部分がありました。

「幾度と賠償金の請求」って、日本は何回賠償金を支払ったの?0回ですよ。何を言っているの?

 慰安婦問題において日本が謝罪の姿勢を示していてそれをいいことに何度も賠償金を要求するのはおかしいと思いました。

いつどこで謝罪の姿勢を示しているの?

賠償金問題

 賠償金に関しては、おおよそ次のような意見がよく寄せられる。

- いつまで賠償金を払い続けなければならないのか - 何度もたかってくるたかりではないか - もう賠償問題は「完全かつ最終的に解決」したはず

 さて、日本はいつ賠償金を支払ったのでしょうか?1965年の日韓基本条約と日韓請求権協定をまずおさえたい。日本は韓国に「経済協力支援」を行ったが「賠償金」は支払っていない。この違いがわからない人は、まず日本語を学びなおす必要あり。


「結局どっちが正しいのとなりました」

って何を聴いているんだろうね。

勝手に日本人を代表してはいけない

 学生のコメント。

 私は今回の授業で、慰安婦問題が特に印象に残った。私は日本人なので、日本は悪くない、日本は賠償したからもう日本が責められる義理はない、と考えてしまいがちですが、日本がまだ責任を果たしていないという話を聞いて、主観で決めつけてしまうのは良くないと感じた。物事を客観的に見る力を、付けなければいけないと感じた。

 私たちは日本人であるというただそれだけの理由で、個人としてアメリカ人一般や原爆を投下したり私たちの家族や先祖を殺害したアメリカ人の家族や子孫に謝罪を求める権利はもたないし、逆にアメリカ人も個人として日本人に対して謝罪をしなければならないような義務は負っていない。これは、日本と東アジアの国々のあいだにおいても同様で、私たちは決して個人として戦争被害者である従軍慰安婦の方々やその家族、子孫に対して謝罪をしなければならない義務を負っているわけではないし、逆に彼女らも私たち日本人に個人としてそうした謝罪を求める権利を有しているわけではないのである。

メディアリテラシー

学生のコメント

ネットのことは良くないけれど私はYoutbeのテレビ局公式チャンネルを見て慰安婦問題などの事を知って、正直私は今回の教授の話を聞いて「どっちが結局正しいの」と思うようになりました。個人的には韓国には少し怒りがあります。

別の学生のコメント。

 今日の授業を聞いて、日本は謝らないことが多く隠蔽しているのもよくあることだと思います。日本の上級国民が隠蔽されるのはおかしいと思いました。上級国民だからと言って隠蔽にしたりするのはおかしいと思います。日本は普通の一般人と上級国民で差別されているのはおかしいと思いました。この授業の雑談で日本のことについてたくさん学べるのでもっと日本について闇を暴きたいなと思いました。

「上級国民」ってネットに毒されすぎ。

自分は慰安婦問題についてはメディアで放送される程度しか知らず、一方的に相手が悪いような報道をよく見ました。けれどメディアがすべて正しいとは限らないことをこれまでの講義で知り、自分なりに調べて理解しようと思った。

メディアの前にちゃんと中学、高校の教科書読んで勉強しましょうよ。

ノンカテゴリー

 学生のコメント。

 僕が思うに、今の韓国のトップは日本が嫌いということは有名だと思います。そこが関わっているかわからないですが、そいうこともあるのでこの問題が1日でも早く解決、良い方向に向くことを期待しています。

 好きとか嫌いとか、あなたみたいな一般人じゃないんですから。そもそも韓国や北朝鮮と一番親身に交流をしてきたのは日本のどの政党でどんな政治家かってことすら理解していない。

大阪、サンフランシスコ市の姉妹都市解消など

  • サンフランシスコ市の従軍慰安婦像設置問題

「従軍慰安婦像」として報じられる向きがあるが、正式名称は「強さをあらわす女性たちによる柱」(Women's Column of Strength)で作者はスティーヴン・ホワイト(Sterven Whyte)。