堀田義太郎「ケア・再分配・格差」『現代思想 2009年2月号』第37巻第2号、2009年、212-25頁

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 2009年3月6日に読む。

 212頁上段1行目にいきなり誤植。「外国人働者」→「外国人労働者」。

 ケアを提供する労働にまつわる問題はもちろん国内だけのものではなく、その意味ではこの論文のテーマもグローバルな問題のはずなのだが、実際に論じられているのはあくまでも国内もしくは富裕な資本主義国家の問題になっている。もちろん社会構造上のさまざまな格差やそれを是正するための再分配や構造改革は私も必要だとは思うけど、グローバルな視点を抜きにして正義だ何だと言われても私としてはいま一つぴんとこない。

ケア労働は低技能単純労働であるため潜在的な担い手(代替的労働力)が多く、低賃金の仕事になる。(213頁下)

私たちは、「やりたい」と思う人、「福祉マインド」をもつ人に従事して欲しいと思っているからである。嫌々やって欲しくはないと思っている。そして実際に従事している人の多くは――、自発的に行っている。だが、この「やりたい」という思いが対価抑制に利用されている。(214頁)

ケアを必要とする人は自費でケアを購入すべきだとは言えない。支払えなくてもケアは得られるべきだからである。(25頁上)

 おそらく「ケアは支払い能力にかかわらずアクセス可能でなければならない」といったようなことを前提として考えているのだろうけど、ケアに対する体系的な定義もなくいきなりこのようなことを言われても読者に真意が伝わらないのではないだろうか。

 この引用の後に立岩真也(以下、立岩)の主張が紹介されているがそこも意味不明。

 216頁下の最後の段落から217頁上「また、一般」から始まる段落の直前まで線を引いた。要はやりたい人にやらせるということになってくると、賃金の抑制圧力がかかりやすいという話。じゃあ、看護師は?医師は?弁護士は?同じ理屈からいけばこれも抑制圧力がかかっておかしくなさそうだけど。これらの職種が低技術単純労働ではなく労働力の供給が少ないという話ではないと思う。おそらくもっち違うところで、たとえば弁護士会や医師会といった職業組合なんかが社会の構造を決めるところでそうならないようにしてるんだろうな。

 220頁下「とはいえ、」から221頁上でその段落が終わるところまで線を引いた。ベーシック・インカム論の構造的欠陥について、そもそもベーシック・インカムで選択の自由が獲得できるのはもともと優位な立場にあった人だけだという堀田の批判。この批判は的を射ている。

細分化は個々の業務の単純化を伴い、必要な技能は細分化が進むほど下がる。(221頁上)

 話にならん。私の考える「逆リンク発想法」だとこういう考え方んはならない。たとえばプールの排水溝の柵を取り付けてねじを締める作業1つとってみても、一見すると単純作業であるかのようにも思えるが、実際にはそれではいけないのであって、単純作業と考えるから事故が起こる。実は同じように見えても場所が決められていたりとか、ねじの形状が見た目にはわからないような違いがあって取り違えると大事に至るとか、こういう情報は「このねじがここでなければならないのは取り違えると事故が起こる可能性がある」とかいった情報のタグをつけてあるものがそうであることの理由を逆に辿っていけるようにしなければならないのである。医師が注射を打つ動作そのものは単純作業で慣れれば子供にだってできる。だけどそれが医師や看護師にしか許されていないのは、それを違った風にしたらどうなるのか、あるいは事故が起こった際の対処法について学習し訓練を受けているからに他ならない。これはプールのねじをしめる人だって一緒。

さらに、一部のベーシックインカム論は、むしろ積極的に「健康増進、保健、余暇、老人関連施設などの分野でより多くの需要が見込まれるさまざまな種類のサービス」への<参加>に期待している。たとえば、「ベーシック・インカムが導入されれば、これらの分野に人々が参入し、多様な雇用可能性の基礎がつくられ」るのではないか、と(シュトラウプハール[2007:127])。(222頁上)

 かんぽの宿やグリーン・ピアの再来ですか?まあ、これを堀田はこの後で批判しているんだけど。シュトラウプハールの参考文献は

  • シュトラウプハール2007「労働市場と社会保障政策の分離」ヴェルナー(ゲッツ・W)『ベーシック・インカム――基本所得のある社会へ』渡辺一男訳、現代書館

 これに続く222頁上「だが、ここ」で始まる段落から、222頁下の最後まで線を引いた。

 224頁上「人々に開か」から本文最後までの結論部分、疑問。結局具体的な解決策らしきものは何も言っていない。