逆選択の問題
死刑存置論
- 死刑制度は人間が不完全で間違いを犯す可能性がつねにあり、えん罪を完全にはなくすことができないため、廃止するべきであるという議論がある。また、死刑というものは残酷で前近代的な刑罰であるがゆえに廃止するべきであるという議論がある。
- これに対して、えん罪の可能性が100%のない場合、たとえば現行犯のような場合であって、人の命を奪うような極めて悪質な犯罪を犯した者に対してはやはり極刑をもって処するべきなのではないかという意見がある。この意見の背景には、当然、人の命を奪うような犯罪は極めて悪質なので、そのような事件は起こらないようにするべきだという前提がある。
- ところが、死刑制度があることによって、死刑になりたいという理由で無差別殺傷事件を起こすような事件が起こるのであり、死刑制度の存置そのものが、無差別殺傷事件を誘発するという側面をもっているのである。これは、犯罪を減らしたいという目的に対して、死刑という手段をとった結果、逆に犯罪が増えてしまうという、目的手段関係で見たときに目的に対する誤った手段をとっていることになる。